標本木
気象庁が、開花の指標になるサクラを「標本木」といいます。
東京のサクラは、靖国神社本殿の近くにあって、能楽堂の横に植えられているサクラ(品種はソメイヨシノ)がそれです。
靖国神社の境内にはソメイヨシノが多数植えられていて、それらの花の開花は千鳥ヶ淵のソメイヨシノより少し早く咲きだします。
私は気象庁がどのような基準で、標本木となるサクラを選ぶのかが気になり、気象庁の東京管区気象台に問合せてみました。
標本木の歴史
靖国神社の標本木の始まりは昭和41年(1966年)からです。
では、なぜ靖国神社境内のこのサクラが、標本木になったのかという問いに、気象庁にも詳細な記録が残っておらず、わかる範囲で回答をいただきました。
サクラの開花観測は、昭和2年(1927年)から気象庁の敷地内のソメイヨシノで観測をしていました。
かつて気象庁の建物は平川門付近にあり、その後はKKR HOTEL TOKYO(国家公務員共済組合連合会 東京共済会館)の場所に移転し、その後も移転、そして現在は虎ノ門へ。
移転して以来、気象庁の敷地内にサクラを持つことができなくなったため、かつての敷地内で観測していたソメイヨシノと同じ時期に開花するソメイヨシノを、靖国神社の中で選んで、それを標本木としました。
それ以来、標本木は、靖国神社のソメイヨシノで観測することになりました。
気象庁の目安は、花が5〜6輪咲いたら「開花」を発表しています。
なぜ染井吉野が観測の対象になったのか
私は標本木を、サクラの品種の中で、なぜソメイヨシノを選んだか、その理由に興味を持ちました。
その答えは、ソメイヨシノが全国に広く植えられている品種だからでした。
気象庁は、観測地にソメイヨシノが生育していなければ、別の種のサクラで観測しています。
ソメイヨシノの生育地の北限は北海道の札幌以南で、南は九州まで生育しています。
沖縄県は生育しておらず、北海道の札幌以北ではエゾヤマザクラに替えています。
全国の気象官署にてサクラは観測されています。
靖国神社の標準木の引退について
私には靖国神社の 標本木は老木だと思いましたので、その木の引退後が気になりました。
気象庁の回答では、今のところ開花する花芽が減少したりしていないので、現状を維持していくそうです。
もし、標本木に衰えが見えたら、新しい別のサクラを標準木とするそうです。
そして、気象庁はサクラの開花だけを観測しているわけではなく、季節の便りとして数十種類の動植物や昆虫なども観測しています。
植物なら梅、タンポポ、動物なら燕、昆虫なら蝉やトンボなどの生き物が対象になっており、日本各地の気象官署が観測をしています。
これ等は知っているようで知らない素朴な疑問です。
皆様にもお役に立てばと思いました。

靖国神社の標本木(2025年4月6日撮影)